産前に会陰のことばかり騒いでたので、産後も親しい友人たちからは、会陰の経過について聞かれることが多い。今までオフラインでだけ話してたけど…お答えしよう。
切った。そして縫った。end of story.
極力切らない方針の病院に変え、34週からはカレンデュラオイルで熱心にマッサージをして、「切らずに済んだ三割(たまごクラブ情報)」に食い込もうとしていたのに。努力の甲斐なく、「このままだと切れちゃうから、切ってもらいますね」と、いきなり分娩室にやってきた叶恭子みたいな、化粧に隙のない美人女医にチョキチョキ切られてしまったのだった。「キレイに縫ってくれたから大丈夫よ」と助産師には励まされたけど、キレイも汚いもあるかと。それに「ズタズタよ」とは言わんだろうと。気持ちもアソコも破れかぶれさ。
噂通り、縫った部分は糸がつれて痛かった。立っても座っても寝ても痛い。階段の昇り降りは一際痛い。痔みたいなドーナツクッションなんて絶対使うものかと思ってたけど、使った。退院後も買いに走ってもらった。西友で500円のやつを。ただし、使ってたのは人の見ていないところでだけ。院内でも人が居るところでは絶対に使わなかった。あたしは全然切れてないし、痛くなんてないし、と見栄を張っていたかった(誰も見ていないとしても!)。
縫い目がどうという以前に、周りの領域全体に異変があった。小さい風船か何かが飛び出ているような異物感がある。言うなれば、皮を向いたミカンのような、ムチッとした手応えのあるなにかが体外に出ていて、座るときは尻よりも先にそれが先に着地点にふれるのだ。
…子宮脱? 視力がガタ落ちして見えない目でスマホをなんとか操作して、そのワードを探しあてた。気張りすぎて子宮が外に? 出産翌日に担当助産師に報告すると、「はい、ちょっと足開いて見せて下さい」って、マジですか、個室とはいえいきなりここで開脚ですか、と戸惑ったけど、そんなことは言ってられないので思い切って足を拡げた。
「全体に腫れているだけです、赤ちゃん産んでるんですから! 一応回診時も診てもらいましょう」
腫れてるだけって! ミカン級のものが体外にあるのに! しかも縫い目がしっかり、アメフトボールのような手触りで…。
あたしは常々、「知らないよりも知っている方が絶対に良い」という強いポリシーを持っていて、「聞かない方がいい」と言われることも耳に痛いことも自分は知っておきたいし、「浮気は隠し通してくれればOK」の心理は分からんと思ってたし、末期の病だとしても絶対に告知して欲しいと思っていた。
そんな直視直行型のあたしが、会陰周りはどうしても見られなかった。思い入れが強すぎた。動くだけでもキツかった最初の1,2週間を過ぎても、少し腫れが引いた気がしても、手鏡を覗く勇気は出なかった。手触りや痛みを嘆き、縫い目と玉止めについて検索しまくったが、現実を直視することができなかった。
恐る恐る手鏡を足の間に差しこんだのは、一ヶ月以上経って、全体が二回り程度小さくなってからだ。「腫れぼったい」とは思ったけど、そもそも出産前に形や色のディテールを念入りに見ておかなかったので、実際どう変化したのかは定かでなかった。縫い目は確かに目立たなくなっていて、知らなければどこだかすら分からないだろう。門は左右対称で、なんとなく形もそれっぽい。でも肝心な部分は、文字通りベールに包まれた奥の奥で…。そこへの探検隊は、まだ派遣できていない。