2013年11月30日土曜日

切った張ったの大立ち回り

産前に会陰のことばかり騒いでたので、産後も親しい友人たちからは、会陰の経過について聞かれることが多い。今までオフラインでだけ話してたけど…お答えしよう。

 切った。そして縫った。end of story.

 極力切らない方針の病院に変え、34週からはカレンデュラオイルで熱心にマッサージをして、「切らずに済んだ三割(たまごクラブ情報)」に食い込もうとしていたのに。努力の甲斐なく、「このままだと切れちゃうから、切ってもらいますね」と、いきなり分娩室にやってきた叶恭子みたいな、化粧に隙のない美人女医にチョキチョキ切られてしまったのだった。「キレイに縫ってくれたから大丈夫よ」と助産師には励まされたけど、キレイも汚いもあるかと。それに「ズタズタよ」とは言わんだろうと。気持ちもアソコも破れかぶれさ。

 噂通り、縫った部分は糸がつれて痛かった。立っても座っても寝ても痛い。階段の昇り降りは一際痛い。痔みたいなドーナツクッションなんて絶対使うものかと思ってたけど、使った。退院後も買いに走ってもらった。西友で500円のやつを。ただし、使ってたのは人の見ていないところでだけ。院内でも人が居るところでは絶対に使わなかった。あたしは全然切れてないし、痛くなんてないし、と見栄を張っていたかった(誰も見ていないとしても!)。

 縫い目がどうという以前に、周りの領域全体に異変があった。小さい風船か何かが飛び出ているような異物感がある。言うなれば、皮を向いたミカンのような、ムチッとした手応えのあるなにかが体外に出ていて、座るときは尻よりも先にそれが先に着地点にふれるのだ。

 …子宮脱? 視力がガタ落ちして見えない目でスマホをなんとか操作して、そのワードを探しあてた。気張りすぎて子宮が外に? 出産翌日に担当助産師に報告すると、「はい、ちょっと足開いて見せて下さい」って、マジですか、個室とはいえいきなりここで開脚ですか、と戸惑ったけど、そんなことは言ってられないので思い切って足を拡げた。

「全体に腫れているだけです、赤ちゃん産んでるんですから! 一応回診時も診てもらいましょう」

 腫れてるだけって! ミカン級のものが体外にあるのに! しかも縫い目がしっかり、アメフトボールのような手触りで…。

 あたしは常々、「知らないよりも知っている方が絶対に良い」という強いポリシーを持っていて、「聞かない方がいい」と言われることも耳に痛いことも自分は知っておきたいし、「浮気は隠し通してくれればOK」の心理は分からんと思ってたし、末期の病だとしても絶対に告知して欲しいと思っていた。

 そんな直視直行型のあたしが、会陰周りはどうしても見られなかった。思い入れが強すぎた。動くだけでもキツかった最初の1,2週間を過ぎても、少し腫れが引いた気がしても、手鏡を覗く勇気は出なかった。手触りや痛みを嘆き、縫い目と玉止めについて検索しまくったが、現実を直視することができなかった。

 恐る恐る手鏡を足の間に差しこんだのは、一ヶ月以上経って、全体が二回り程度小さくなってからだ。「腫れぼったい」とは思ったけど、そもそも出産前に形や色のディテールを念入りに見ておかなかったので、実際どう変化したのかは定かでなかった。縫い目は確かに目立たなくなっていて、知らなければどこだかすら分からないだろう。門は左右対称で、なんとなく形もそれっぽい。でも肝心な部分は、文字通りベールに包まれた奥の奥で…。そこへの探検隊は、まだ派遣できていない。




2013年10月25日金曜日

赤ちゃん返り、若返り、あるいは若作り

保育園の見学へ向かう電車のなかで隣り合わせた女子高生が、「別れるっつったらどうする? って彼氏に聞いたわけ。そしたら『絶対そんなことはさせない』って言うのー」「なにそれ、愛されてんじゃん、うらやましいー!」と、惚れた腫れたの浮かれポンチな会話をしていた。

 で、どう思ったかって、「あたしもうらやましいー(>_<)!!」と、怖いくらいの激情にかられた。告るとか告られるとか、別れるとか別れないとか、合コンとかフォローアップデートとか、勝負店とか勝負下着とか、なんかいいわ、そういうのがしたいわ。

 結婚して、男と女の面倒なラブゲームとは無縁で生きられるなんて楽ちんでいいわ、とか思ってたはずなのに。出産の反作用かね。赤ちゃん返り、みたいな? 若返りたいのか、あたし?
 
 女子高生はスマホで連絡とりあって今からおデイトとか行っちゃうわけよ。マックだかなんだか。酒飲めないのはイヤだから制服姿の女子高生に戻るのは勘弁だけど、なんかね〜、現役に戻りたいわね〜、と思うあたしは文字通り乳飲み子を抱えていて、抱っこ紐の中からつぶらな瞳が見つめている。キュート! と思う気持ちと、遊びたいと思う気持ちは、別腹なんだよね…。
 

2013年10月16日水曜日

そして母になる

8月15日にパンダが産まれてから二カ月経過。今までのように日にちを遡ってごまかそうか迷ってやめた。二カ月経って感じることを、ここまでの期間に置き換えると、だいぶ嘘っぽいから。

 育児エッセイやマンガの多くが大体二カ月くらい経過してから始まっているのを不思議に思っていたけど、産んでみるとよく分かる。そんな時間はどこにもない。体力もない。当然気力もない。ついでに目もかすんで見えにくくなっていて、何かを読んだり書いたりするどころじゃなかった。もうこのまま見えないんじゃないかと思った。ダメなんじゃないかと思った。出奔しようかと思った。でも何をするにも体力と精神力がなかった。いつも泣きたいような気分だったけど、涙はまったく出なかった(そして先週、視力低下について「涙が足りない」と眼科で診断される)。

 出産当日に生まれて初めて赤ん坊のオムツを替えて以来数百回のオムツ替え、同じく数百回の授乳を経て、頑なに避けていた「おっぱい」「赤ちゃん」「うんち」「おしっこ」等の単語も臆面なく言えるようになった…というより、ボキャブラリーがもはやそれしかなくなった。

 母性や母親としての自覚の芽生えは感じないし、頭の中は嫌になるほど相変わらず自分のことばかりで、ドーパミンや幸せオーラが分泌される実感もないのに、乳はほとばしり出た。他人に乳の出について聞かれるのにも慣れた。乳幼児虐待のニュースを見ながら、「こんな親でもこの日々を乗りきって、子どもが三歳やら五歳やらまでは育ってるんだな」と変に感心した。

 妊娠で八キロ増えた体重は、産後一ヶ月で十二キロ減った。一ヶ月検診では医師に「おめでとう、卒業です。日常生活に戻れます」って言われたけど、手放しでは喜べない変化が体に残ってるし、戻るべき日常なんてもうないような気がした。少なくともあたしの定義での「日常」は。浴びるほど飲みたい衝動に何度も駆られた。でも飲まなかった、浴びるほどには。寝られないし飲めないし外に出られないし、したいことが何一つできないなら、日常生活って何?

 そんな状態で二カ月が経って、新生児は乳児になり、あたしは母になった。…のか? パンダには多くを求めない(今のところは)けど、生きていく上で「明けない夜はない」という月並みなことを知ってほしいと思った。だからあたしもそればかりを念じた。この眠れない夜が無事明けますように。長い夜は明けそうなののか、まだまだ明けないのか。はたまた白夜だったりして? 母になるよりも女でありたいんだけど? …懐疑的で欲張りなあたしが戻ってくることが、なによりも復活の兆しなのかもしれないけど…。

2013年7月20日土曜日

洗いざらしのロンパース

新品を着せるのはクールではないので、風合いを出すためにベビー服を洗った。…って、ヴィンテージ仕様のジーンズじゃあるまいし。

 ベビー服は、一度「水通し」するのが望ましいらしいですよ、奥さん。ご存知でした? あたしは知らなんだ。一部の衣類に「水洗い不要」という表示を見つけて、「ということは、ほかは必要なんだな」ということを逆説的に理解したんだけど、まぁ人に寄りけりらしい。哺乳瓶の消毒ほどには一般的ではないらしい。ワゴンセールの商品を洗ったり洗わなかったり(そもそも買ったり買わなかったり)するのと同じだな。

 大雑把なはずの妹が、「最初は赤ん坊用洗剤で水通ししたよ。暇あるんだからやっておきなよ」と言うので、しておくことにした。無菌主義じゃないけど。むしろ免疫つけて欲しいけど。「戦時中は防空壕でも出産してたし、不衛生な環境でも育つ子は育つし」とブツブツ言いながらジップロックにしまっていたら、オットの人に「とか言いながらやってるけどね」と笑われたのが悔しかった。

 洗いざらしのベビー服は、見事にシワシワ、くしゃくしゃの使用感が出ている。これが単なるお下がりコレクションと捉えられるか、愛情をかけた水通しアイテムと捉えられるか。パンダの着こなし術に期待したい。

2013年7月13日土曜日

産休告知メールと不在通知

産休前の挨拶メールをto do リストに置いたまま、いよいよ来週から休み、と日程が差し迫ってしまった。いっそ出さないというのはどうだろう。メールが届いた場合だけ自動返信で不在を通知する設定にしておくとか。ただそれだと、メールをもらった相手に「当然(産休について)関係先に知らしめたであろうに、自分には連絡がなかった」と誤解されかねないし、先方は自動返信をみてから別の担当者に連絡をしなければならない、という二度手間になってしまう。「なお、どなたにも事前告知はしておりません」と付記するわけにもいくまい。具体的な予定日を知らせないまでも、いずれ産休に入ることは知らせていた相手には「そろそろかな」と思われているに違いない。

 それでも気が進まないのは、産休という非常にパーソナルな事柄を伝えなければいけないことへの戸惑いがあるのと、それをどのレベルの関係先まで送るのソートが面倒だからなのだった。自分自身が届いた挨拶メールに対して「イベントで一年前に名刺交換したことがあるだけなのに、わざわざ産休を知らせてくるなんて、余程うれしいに違いない」と邪推した経験もある。あたしほどねじ曲がった受け取り方をする人はそういないのかもしれないが、妊娠・出産に対して様々な取組みや思いを持っている人を考えると、行間におめでたさがにじみ出るような挨拶メールは出したくない(検索するとこの手の文例が多い)。復帰時期は重要な要素なのに未定事項。課題は多い。
 
 スマートかつプロフェッショナルな挨拶メールの前例がないか、編集者であるところの友人たちにも尋ねたのだが、特に心当たりはないという。でも告知は出すべき、というアドバイス。できれば産休ということにもふれたくないが、「長期休暇」とだけ書けばメンタルかワケありだと思われて余計な心配をされてしまう。悩んだ挙句、無駄を削ぎ落として非常にシンプルな挨拶文を作成した。

 メールへの自動返信で誰彼構わず産休中だと告げるのはどうしても嫌なので、簡潔で曖昧なところで妥協した。英文併記なのでよくよく英語版を読むと産休だと分かる、という隠れメッセージつき。英語は簡潔に済むからいいな。

 これでも不愉快に感じたり、疑問を持ったりする人はいるのかもしれない。誠に挨拶メールというのは難しい。なんとか出し終えて「産休前の挨拶メール」の項をチェックできたのは良いけど、復職したときの挨拶メール、というのがto do に加わったので+−0…。半年後のあたしは、業務効率化のオニになっていて、こんなつまらんことに時間を取られたりしないのだ、と思いたい。


[同報挨拶メール]
(※一斉送信にて失礼します)
日頃より大変お世話になっております。
私事ではありますが、来週、X月XX日より出産のために長期休暇をいただくことになりました。来週以降のお問合せにつきましてはXXXまでお願いします。

復帰後、また皆さまとお目にかかることを心より楽しみにしております。
末筆ながら皆さまのご健康とご多幸をお祈り申し上げます。


[不在通知]
当面の間、休暇をいただいております。
お手数ですがお問合せはXXX宛にお願いします。

Hi,
I'm taking maternity leave and will be out of the office for a while.
During my leave, please contact XXX.
Thanks.

2013年7月6日土曜日

九ヶ月妊婦の海外行き…その顛末

念願叶ってタイ出張、無事に旅立って意気揚々と帰国する…ところまでは良かった。タイ航空で診断書にちょっとケチがついたけど(※営業日に関係なく7日以内の診断書が必要なため、火曜出発で前週火曜は基本NGだと言われてチェックイン時に軽くもめた。休診日もあるし、前日に行くほどヒマではない)、フライトはなんの問題もなかったし、何人かに脅された「気圧の変化でお腹がおかしくなる」ようなこともなかった。むしろ成田からのNEX&JRの旅の方がしんどかった。

 現地ではいつになく慎重に、ホテル内と高級レストランと空港・機内でしか食事もとらなかった。ストリートフードにも途上国のナマモノにも果敢に挑戦するあたしにしてはよく頑張った。

 しかし。「一般人の10倍くらい菌に弱くなっている」(出展は覚えてないけどどっかに書いてあった)妊婦の体をナメてはいけない。早朝便で帰国して、昼にはいなり寿司、夜はあまり誇れないがデリバリーピザを食べたところまでは良かった。早めに就寝しようとした22:00前後、猛烈な嘔吐と下◯、胃痙攣に襲われて夜間救急に電話、クルマで病院に急行〜。

 診断は急性胃腸炎と、それに伴う切迫早産とやらで、深夜に検査を諸々受け、安静指示をうけて帰宅。整腸剤でどうにかなるレベルじゃないけど、痛み止めは飲めず…。数分おきにくる強烈な差し込みに身悶えしながら、眠れない夜を過ごす。陣痛の予行演習のようだ。陣痛じゃなくて本当に良かったけど、「刺激で産まれちゃうとマズイから」って医者に言われたけど、本当にマズイよ、荷解きしてない出張の荷物以外はなんの入院準備もできてない、つうかまだ買い揃えてすらいない!

 痛みのなかでもあたしは、少女パレアナのように前向きであろうとした。パンダよ、胎内に踏みとどまってくれてありがとう、雷鳴轟いているだろうがしばし我慢してくれ、と念じつつ、胃腸炎の潜伏期間というやつに心から感謝する。現地で発症してたら、あのタイ航空が載せてくれるはずがなく…うう、執行猶予バンザイ。母国の土を踏ませてくれてコップンカー。


 そして空白の五日間。入院は頑なに拒否して、通院による点滴生活。「こういうのは長いから、一、二週間かかりますよ」って医者には言われたけど、四日間でなんとか生活レベルに、一週間でほぼ正常に戻った。当然出社もできなかったけど、同僚たちは心配してフォローしてくれた。すいません、すいません。現地で飲酒とか夜遊びとかしてなくて良かったよほんと。同情の余地がなくなるところだった。

 出張にあたり「あまりお勧めしませんよ」と釘を差されていた医者には自業自得オーラで診察されるのを覚悟していたのだが、それもなかった。忘れていただけかもしれないが。大変だったわね、と助産師たちも優しかった。皆さまの、暖かいご支援が、ただれた胃に染みます…。

 切迫早産の危機も脱して健康体に戻ったから言えることだろうが、それでもあたしは行って良かったと思う。出張から得たものは大きかったし、行かなかったら行かなかったで、慎重過ぎたな、と悶々としていたと思う。やらないより、やって学習する方が好きな射手座なんで。What doesn't kill you makes you stronger...また一つ、逞しくなりました。



2013年6月12日水曜日

「ママ友」に感じる違和感

妊娠・出産周りには、違和感を感じるボキャブラリーが多々ある。「プレママ」(「ママ」になる前、つまり妊婦のこと)、「仲良し」(妊娠中のセックスのことらしい)なんかの妊婦雑誌に造られたと思しき単語はもちろんだが、「おっぱい」「赤ちゃん」等の一般的な般用語も、あたしの辞書では「乳」「胎児」に変換しておきたいのだが、いけないんだろうか。自主的には発語せずに通しているのに、隠語を言わされるプレイかのように、表現を強要されそうになることが時々ある。

 フライトチケットをとるときに、「赤ちゃんはお一人ですか?」という質問に対して「はい、"赤ちゃん"は一人です」と答えることができなくて、かといって、その質問に「"胎児"は一人です」と応じることも憚られたので、メールを引用する形で

>赤ちゃんはお一人ですか?
はい、そうです。

と返信した。
助産師に「おっぱいの調子はどうですか」と問われれば、「異常ありません」と答える。

主語を返さなくて良い日本語の便利さよ。どうでも良すぎるこだわり。会陰の話はどこででもできるのに。

 「ママ友」も、必要もなければ発語することもないだろうと思っている。「ママ友になりましょうね!」と言われれれば、波風を立てたくないので曖昧に微笑みながら「いろいろ教えて下さいね〜」とかなんとか答えてごまかすけど、そもそもママ友ってなんなんだ? 

 一緒に飲む友だちはせいぜい「飲み仲間」、「同様に企業に勤める友だち」を表現する言葉は特にないし、学生時代の友だちは「高校時代(から)の友だち」とヒラくしかない。なんでママ友にだけ独特の表現が用意されてるんだ? 「〜友」って表現、品がなくて悪いけど、セフレとかヤ◯友を連想させるんだよね。利害関係なのか。情報とベンチマークの? あるいは趣味を同じくする仲? 「句友」みたいに。子育てという共通の趣味。

 「ママ」という表現にも、いい大人が「友だちになりましょう」と言って友情を始めることにも違和感があるのでダブルでくらうのだ。こういうネクラでひねくれたことを考えるあたしは「ママ友」には向かない、ということを、母親学級で一緒になった「プレママ」たちもいずれ察するだろう。

 入院予約に関して、「初産は特に相談とか、話し相手とかいた方がいいから、修学旅行が苦手じゃなかった人は(笑)ぜひ大部屋にして下さい」と助産師が勧めていた。あたしは迷わず個室を希望した。さらばママ友予備軍…あたしは孤独と乳飲み子と同室で充分だよ。