2013年11月30日土曜日
切った張ったの大立ち回り
切った。そして縫った。end of story.
極力切らない方針の病院に変え、34週からはカレンデュラオイルで熱心にマッサージをして、「切らずに済んだ三割(たまごクラブ情報)」に食い込もうとしていたのに。努力の甲斐なく、「このままだと切れちゃうから、切ってもらいますね」と、いきなり分娩室にやってきた叶恭子みたいな、化粧に隙のない美人女医にチョキチョキ切られてしまったのだった。「キレイに縫ってくれたから大丈夫よ」と助産師には励まされたけど、キレイも汚いもあるかと。それに「ズタズタよ」とは言わんだろうと。気持ちもアソコも破れかぶれさ。
噂通り、縫った部分は糸がつれて痛かった。立っても座っても寝ても痛い。階段の昇り降りは一際痛い。痔みたいなドーナツクッションなんて絶対使うものかと思ってたけど、使った。退院後も買いに走ってもらった。西友で500円のやつを。ただし、使ってたのは人の見ていないところでだけ。院内でも人が居るところでは絶対に使わなかった。あたしは全然切れてないし、痛くなんてないし、と見栄を張っていたかった(誰も見ていないとしても!)。
縫い目がどうという以前に、周りの領域全体に異変があった。小さい風船か何かが飛び出ているような異物感がある。言うなれば、皮を向いたミカンのような、ムチッとした手応えのあるなにかが体外に出ていて、座るときは尻よりも先にそれが先に着地点にふれるのだ。
…子宮脱? 視力がガタ落ちして見えない目でスマホをなんとか操作して、そのワードを探しあてた。気張りすぎて子宮が外に? 出産翌日に担当助産師に報告すると、「はい、ちょっと足開いて見せて下さい」って、マジですか、個室とはいえいきなりここで開脚ですか、と戸惑ったけど、そんなことは言ってられないので思い切って足を拡げた。
「全体に腫れているだけです、赤ちゃん産んでるんですから! 一応回診時も診てもらいましょう」
腫れてるだけって! ミカン級のものが体外にあるのに! しかも縫い目がしっかり、アメフトボールのような手触りで…。
あたしは常々、「知らないよりも知っている方が絶対に良い」という強いポリシーを持っていて、「聞かない方がいい」と言われることも耳に痛いことも自分は知っておきたいし、「浮気は隠し通してくれればOK」の心理は分からんと思ってたし、末期の病だとしても絶対に告知して欲しいと思っていた。
そんな直視直行型のあたしが、会陰周りはどうしても見られなかった。思い入れが強すぎた。動くだけでもキツかった最初の1,2週間を過ぎても、少し腫れが引いた気がしても、手鏡を覗く勇気は出なかった。手触りや痛みを嘆き、縫い目と玉止めについて検索しまくったが、現実を直視することができなかった。
恐る恐る手鏡を足の間に差しこんだのは、一ヶ月以上経って、全体が二回り程度小さくなってからだ。「腫れぼったい」とは思ったけど、そもそも出産前に形や色のディテールを念入りに見ておかなかったので、実際どう変化したのかは定かでなかった。縫い目は確かに目立たなくなっていて、知らなければどこだかすら分からないだろう。門は左右対称で、なんとなく形もそれっぽい。でも肝心な部分は、文字通りベールに包まれた奥の奥で…。そこへの探検隊は、まだ派遣できていない。
2013年10月25日金曜日
赤ちゃん返り、若返り、あるいは若作り
で、どう思ったかって、「あたしもうらやましいー(>_<)!!」と、怖いくらいの激情にかられた。告るとか告られるとか、別れるとか別れないとか、合コンとかフォローアップデートとか、勝負店とか勝負下着とか、なんかいいわ、そういうのがしたいわ。
結婚して、男と女の面倒なラブゲームとは無縁で生きられるなんて楽ちんでいいわ、とか思ってたはずなのに。出産の反作用かね。赤ちゃん返り、みたいな? 若返りたいのか、あたし?
女子高生はスマホで連絡とりあって今からおデイトとか行っちゃうわけよ。マックだかなんだか。酒飲めないのはイヤだから制服姿の女子高生に戻るのは勘弁だけど、なんかね〜、現役に戻りたいわね〜、と思うあたしは文字通り乳飲み子を抱えていて、抱っこ紐の中からつぶらな瞳が見つめている。キュート! と思う気持ちと、遊びたいと思う気持ちは、別腹なんだよね…。
2013年10月16日水曜日
そして母になる
母性や母親としての自覚の芽生えは感じないし、頭の中は嫌になるほど相変わらず自分のことばかりで、ドーパミンや幸せオーラが分泌される実感もないのに、乳はほとばしり出た。他人に乳の出について聞かれるのにも慣れた。乳幼児虐待のニュースを見ながら、「こんな親でもこの日々を乗りきって、子どもが三歳やら五歳やらまでは育ってるんだな」と変に感心した。
2013年7月20日土曜日
洗いざらしのロンパース
ベビー服は、一度「水通し」するのが望ましいらしいですよ、奥さん。ご存知でした? あたしは知らなんだ。一部の衣類に「水洗い不要」という表示を見つけて、「ということは、ほかは必要なんだな」ということを逆説的に理解したんだけど、まぁ人に寄りけりらしい。哺乳瓶の消毒ほどには一般的ではないらしい。ワゴンセールの商品を洗ったり洗わなかったり(そもそも買ったり買わなかったり)するのと同じだな。
大雑把なはずの妹が、「最初は赤ん坊用洗剤で水通ししたよ。暇あるんだからやっておきなよ」と言うので、しておくことにした。無菌主義じゃないけど。むしろ免疫つけて欲しいけど。「戦時中は防空壕でも出産してたし、不衛生な環境でも育つ子は育つし」とブツブツ言いながらジップロックにしまっていたら、オットの人に「とか言いながらやってるけどね」と笑われたのが悔しかった。
洗いざらしのベビー服は、見事にシワシワ、くしゃくしゃの使用感が出ている。これが単なるお下がりコレクションと捉えられるか、愛情をかけた水通しアイテムと捉えられるか。パンダの着こなし術に期待したい。
2013年7月13日土曜日
産休告知メールと不在通知
[同報挨拶メール]
日頃より大変お世話になっております。
私事ではありますが、来週、X月XX日より出産のために長期休暇をいただくことになりました。来週以降のお問合せにつきましてはXXXまでお願いします。
復帰後、また皆さまとお目にかかることを心より楽しみにしております。
末筆ながら皆さまのご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
[不在通知]
お手数ですがお問合せはXXX宛にお願いします。
Hi,
I'm taking maternity leave and will be out of the office for a while.
During my leave, please contact XXX.
Thanks.
2013年7月6日土曜日
九ヶ月妊婦の海外行き…その顛末
現地ではいつになく慎重に、ホテル内と高級レストランと空港・機内でしか食事もとらなかった。ストリートフードにも途上国のナマモノにも果敢に挑戦するあたしにしてはよく頑張った。
しかし。「一般人の10倍くらい菌に弱くなっている」(出展は覚えてないけどどっかに書いてあった)妊婦の体をナメてはいけない。早朝便で帰国して、昼にはいなり寿司、夜はあまり誇れないがデリバリーピザを食べたところまでは良かった。早めに就寝しようとした22:00前後、猛烈な嘔吐と下◯、胃痙攣に襲われて夜間救急に電話、クルマで病院に急行〜。
診断は急性胃腸炎と、それに伴う切迫早産とやらで、深夜に検査を諸々受け、安静指示をうけて帰宅。整腸剤でどうにかなるレベルじゃないけど、痛み止めは飲めず…。数分おきにくる強烈な差し込みに身悶えしながら、眠れない夜を過ごす。陣痛の予行演習のようだ。陣痛じゃなくて本当に良かったけど、「刺激で産まれちゃうとマズイから」って医者に言われたけど、本当にマズイよ、荷解きしてない出張の荷物以外はなんの入院準備もできてない、つうかまだ買い揃えてすらいない!
痛みのなかでもあたしは、少女パレアナのように前向きであろうとした。パンダよ、胎内に踏みとどまってくれてありがとう、雷鳴轟いているだろうがしばし我慢してくれ、と念じつつ、胃腸炎の潜伏期間というやつに心から感謝する。現地で発症してたら、あのタイ航空が載せてくれるはずがなく…うう、執行猶予バンザイ。母国の土を踏ませてくれてコップンカー。
そして空白の五日間。入院は頑なに拒否して、通院による点滴生活。「こういうのは長いから、一、二週間かかりますよ」って医者には言われたけど、四日間でなんとか生活レベルに、一週間でほぼ正常に戻った。当然出社もできなかったけど、同僚たちは心配してフォローしてくれた。すいません、すいません。現地で飲酒とか夜遊びとかしてなくて良かったよほんと。同情の余地がなくなるところだった。
出張にあたり「あまりお勧めしませんよ」と釘を差されていた医者には自業自得オーラで診察されるのを覚悟していたのだが、それもなかった。忘れていただけかもしれないが。大変だったわね、と助産師たちも優しかった。皆さまの、暖かいご支援が、ただれた胃に染みます…。
切迫早産の危機も脱して健康体に戻ったから言えることだろうが、それでもあたしは行って良かったと思う。出張から得たものは大きかったし、行かなかったら行かなかったで、慎重過ぎたな、と悶々としていたと思う。やらないより、やって学習する方が好きな射手座なんで。What doesn't kill you makes you stronger...また一つ、逞しくなりました。
2013年6月12日水曜日
「ママ友」に感じる違和感
妊娠・出産周りには、違和感を感じるボキャブラリーが多々ある。「プレママ」(「ママ」になる前、つまり妊婦のこと)、「仲良し」(妊娠中のセックスのことらしい)なんかの妊婦雑誌に造られたと思しき単語はもちろんだが、「おっぱい」「赤ちゃん」等の一般的な般用語も、あたしの辞書では「乳」「胎児」に変換しておきたいのだが、いけないんだろうか。自主的には発語せずに通しているのに、隠語を言わされるプレイかのように、表現を強要されそうになることが時々ある。
フライトチケットをとるときに、「赤ちゃんはお一人ですか?」という質問に対して「はい、"赤ちゃん"は一人です」と答えることができなくて、かといって、その質問に「"胎児"は一人です」と応じることも憚られたので、メールを引用する形で
>赤ちゃんはお一人ですか?
はい、そうです。
と返信した。
助産師に「おっぱいの調子はどうですか」と問われれば、「異常ありません」と答える。
主語を返さなくて良い日本語の便利さよ。どうでも良すぎるこだわり。会陰の話はどこででもできるのに。
「ママ友」も、必要もなければ発語することもないだろうと思っている。「ママ友になりましょうね!」と言われれれば、波風を立てたくないので曖昧に微笑みながら「いろいろ教えて下さいね〜」とかなんとか答えてごまかすけど、そもそもママ友ってなんなんだ?
一緒に飲む友だちはせいぜい「飲み仲間」、「同様に企業に勤める友だち」を表現する言葉は特にないし、学生時代の友だちは「高校時代(から)の友だち」とヒラくしかない。なんでママ友にだけ独特の表現が用意されてるんだ? 「〜友」って表現、品がなくて悪いけど、セフレとかヤ◯友を連想させるんだよね。利害関係なのか。情報とベンチマークの? あるいは趣味を同じくする仲? 「句友」みたいに。子育てという共通の趣味。
「ママ」という表現にも、いい大人が「友だちになりましょう」と言って友情を始めることにも違和感があるのでダブルでくらうのだ。こういうネクラでひねくれたことを考えるあたしは「ママ友」には向かない、ということを、母親学級で一緒になった「プレママ」たちもいずれ察するだろう。
入院予約に関して、「初産は特に相談とか、話し相手とかいた方がいいから、修学旅行が苦手じゃなかった人は(笑)ぜひ大部屋にして下さい」と助産師が勧めていた。あたしは迷わず個室を希望した。さらばママ友予備軍…あたしは孤独と乳飲み子と同室で充分だよ。
2013年6月4日火曜日
はじめての保育園見学
区で(妊娠が判明して衝撃を受けたその日に)もらった書類を見返してもさっぱり理解できないし、表面上の手続きしか書かれていなくて、何がどうすると「待機」児童とやらになるのかも分からない。親切な同僚や友人たちから断片的な情報をもらい、早々に開戦した方が良いらしいことは理解した。産まれてもいないのに保育園探しねぇ。
通えそうな範囲にある認可・認証・無認可保育園を洗い出して一覧にする作業は表作りが得意なオットの人に任せて、ベースができあがったところでアプローチを開始。まとめて役所に申請する認可はとりあえず置いておいて、手始めに近所の認証保育園に電話をしてみると、出産後にのみ見学・キャンセル待ち可能、現在0歳児の待機50名程度とのこと。そして(複数の園に併願しているであろうことを鑑みても)既に50名って…。
クラクラしながらリストの次点に電話。現在0歳児の待機60名程度、平日の13:30〜見学会と登録受付、訪問ナシの登録は不可。いや、あの、平日の13:30は労働してるから、保育園に興味があるんですけどね…という心の声を虚ろに響かせつつ、次回の検診の日にアポをとった。
そして当日。猛暑のなか汗だくでたどり着いた、交通の便の至極悪い園。ここに通うのって現実的なのかな、と疑問を抱きつつ、部屋の片隅の二畳くらいの空きスペースで「見学会」が始まるのを待つ。13:30現在、キッズは昼寝タイムで爆睡中。ほかにもう一人、1歳児を連れた女性が参加。
「こんにちは。当園はこんな感じです。ご質問はありますか」
二畳スペースから一歩も移動しないまま、まさかの100%リアクティブオンリー対応! 何らかの説明を受けられるものと思っていたあたしは度肝を抜かれて言葉を失ってしまった。もう一人の女性が質問をするが、一歳児の入園はまず無理、というニュアンスのことを言われて意気消沈している。
園の人数、延長保育等、なんとか思いついたいくつかの質問をして登録カードというのを記入。一年間保管します、空きが出たら連絡します、という説明を聞いてから扉を出たのが13:38。8分…。後半休までとって8分の「見学会」にどっと疲れた。
つくづく先が思いやられるが、戦いの火蓋は切って落とされたのだからやるしかない。戦わないことを選ぶと「区議会議員への付け届けで入園できた知人がいる」という都市伝説まがいの情報を追求するしか選択肢がなくなる。怠惰な平和主義者としてはそっちの方に行きたい気もするけど…。
2013年6月3日月曜日
マタないはずのマタクシー
タクシーに載ったら、「マタニティ・タクシー」のパンフが目に入った。事前に登録しておくと陣痛で病院に移動するときにスムーズに配車してくれる、というサービスだ。前に深夜のタクシーでお喋りな運転手さんにつかまり「最近はこんなサービスもしてるんですよ」と言われたときは、無縁のものとして聞き流していたのに、まさか自分が利用することになるとは。
陣痛が起こったときに家人が在宅ならばもちろん送ってくれるだろうが、いつ何時起こるか分からない。死ぬほど痛いらしいから、自分で運転は多分無理なんだろう。さっそく登録してみる。配車料金の400円が加算されるけど、基本は通常の乗車料金。自宅と病院を登録しておくことで、細かい道順を言わなくても輸送してくれるはずで、料金は後払いにもできるそうな。
なんとなく贔屓の国際自動車(km)にしたけど、日本交通も「陣痛タクシー」として同様のサービスを提供している。ざっと比較した限り、km は破水に備えたシートのタクシーが来て、日本交通はタオルかビニールシートを自分で用意する、という点だけが違う。km のがラクだけど、その分破水アトがあるのかもしれないし、どっちのがいいのかは分からん。
なんとなく安心、という反面、ホントにいざという時に頼れるの? うちの前の一方通行大丈夫?いつも大通りでタクシー降りるけど? と疑心暗鬼になって、オオカミ少年プレイ(試しに呼んでみる)をしたくてウズウズしてたら、なんと登録翌日に電話がかかってきた。「地図で確認していますが、この角の物件でよろしいですか?」と確認される。やるなぁ。出番は基本一回しかないし、それすらも、状況によっては(誰かが送ってくれるとか)流れるかもしれないのに、この細やかさ。日本的なサービスにちょっとホッとする。陣痛…遥か遠いことのようで、順調にいけば三ヶ月以内に確実にやってくるもの…ピースでセーフなドライビングでコトが運びますよーに。
2013年5月21日火曜日
Don't cry for me, Japan...
酒席でマタニティマークの話になったので、例によってMマークをつけない方針について語った。方針もなにも、酒場で管巻いてるような俗人が、通勤時つらいからってこれ見よがしにMマークをつけるのは赦されるものではないというくらいの自覚はある。
「人は様々な事情を抱えてるけど、それぞれにマークがあるわけではない。ましてや妊婦は病気ではない。つらそうな人がいたら検知して席を譲る、という単純な思い遣りじゃだめなんだろうか」と主張したら、「実は同じようなことを考えていて、Mマークには賛同しかねるけど表立ってそうは言いづらい」という友の意見が引き出せた。「その考え方いい。総理大臣になってよ。エヴィータになれるよ」って。なんせアルゼンチンでこそないが、酒の席なんで。
Mマークは付けていないものの、さすがに腹が目立ってきた。時差通勤な上に遠回りして出勤してるし、人が降りる駅では自分で空席確保に動くし、できるだけ人に面倒をかけないようにしたいと思いつつ、そうも言っていられない。一週間のうちに二回席を譲られ、ありがたく座らせてもらった。Mマークを着用していなくても、席の前、特に優先席の前にこれ見よがしに立つと人にプレッシャーをかけてしまうんじゃないだろうか、と思い、ドアの周辺や、そこも空いていない場合は「どこでもない通路」に立つことにしていたんだけど、踏ん張って余計に負荷がかかるためにきつくなって、素直に車両の両端に行くようになった。そうすると必然的に優先席周りになってしまうので緊張する。
携帯に夢中な人ならば気づかなくて負担にならないだろうか。いやむしろ強くアピールしているように見えるだろうか。誰も全然気にしていないであろうことを一人思い悩むあたしは小さい。自意識過剰で実に小者だ。オットの人に言わせると「過剰にシャイ」なんだそうだ。こんな小市民ではエヴィータにはなれそうにない。
2013年5月15日水曜日
タイに行きタイ
タイは何度か行ったことがあるし、行くとしても仕事の日程のみでいくので、目的は自由時間ではない。ピュアーに仕事で出ておきたい会議があるからなんだけど。自分の目算では28週あたりで行けるかと思っていたのがずれて、九ヶ月に差し掛かってしまうとなるとさすがに躊躇する気持ちもある。
体調は良好とはいえ、いつ変化するか分からないし、しかも首都とはいえ途上国である。とりあえず同僚にタイの医療事情を聞き、日本語・英語OKの総合病院の存在を教えてもらって+1。32週あたりでの海外行きについて検索して、知恵袋で「赤ちゃんの安全を第一に考えたら、そんな無謀なこと信じられません!」的な無用コメントに消耗して-3。32週までを帰省時期としてお勧めします、体調管理に充分に気をつければ◯、という助産師の建設的な見解に+5。行く、行かない、でもやっぱり行きタイ…。タイの医療事情も一応確かめると、中にはわざわざ出産しにタイに渡った人のブログなんかもあって心強い。いやあ、4泊の出張で思い悩むなんて甘いねー。と、都合の良い情報だけを尊ぶ。
日系航空会社は36週以降で医師の診断書が必要なのに対し、タイ航空は28週以降と厳しい。でも予算的にはタイ航空にせざるを得ない。搭乗7日前以内に医師からの英文診断書の発行、ってエライ面倒くさいけど、背に腹は代えられないので渋々承諾。また検診に余計に時間かかるよ。
一ヶ月後、どれだけ身重度が増してるか想像がつかないし、体調崩したらキャンセルするしかないけど、パンダくん、腹の中で五度目の海外行き(最初の三回は存在に気づいてなかったとけどね)だから慣れたもんでしょう。Bangkok, here we come!
2013年5月14日火曜日
オトコとオンナの間には
外食・飲み会ライフを当面中止にしなければいけなくなるので(もう中止しろよ、という声はさておき)、活動の締め括りに日々精を出している。お互いに既婚、あるいはパートナーがいるし、気のおけない飲み友だちだし。仕事の愚痴っぽいこととか、夢とか幻想とか、行った・行きたい旅行の話とか、まぁ酒が進めばなんでもよくて、そんな話で盛り上がるのが、性別を問わず常だったのだけど。今のホットな話題はあたしの妊娠には違いなくて、自然と妊娠とキッズの話題になる頻度が増すと共に、異性の友人たちの新たな一面も知ることになる。それは、父の顔。
気のおけないフランクな男友達。その多くは、既に父であった。あるいは、自由人だが、家族間や子どもに対してなにかしらの思いを持っていた、という新事実。
年も年だし、当たり前といえば当たり前なんだけど、今まで意識したことがなかったのだ。そういえば、妻子は家に居るけどキミは日々飲み歩いてるのね、とか、その恋バナは当然、妻子を無視したところで進行しているのね、とか。あるいは子どものケアとか教育とかに実は心血注いでたり、無頼派気取りかと思いきや、休日は割り切ったマイホームパパだったり。
「なんで今まで子どもの名前も話も一度も聞いたことがなかったんだろう?」
「だって興味なかったでしょう?」
その通り。興味がなかった。でも、今もそこまではないのにキミは勢いづいている! へぇ〜、新鮮〜! と思う一方で、何かが決定的に「損なわれている」感じが胸中を渦巻く。
何が「損なわれて」しまったのか。それは、どこか僅かなところでは意識していた、男女間にたゆたう、甘やかで心地良い細い川みたいなもの。小ネタ家族ネタ解禁、知らなくて良い一面を知るにつれ、その周りがちょっとずつ決壊していく。ネタバレ注意、ってやつですか。
雑誌VERY でいうところの「女/妻/母」、あたしが後者二つのスイッチもあることを見せたところで、異性の夫/父の顔を露呈させてしまったという衝撃。やましいところのない、なにも期待しないところにあったはずの淡い関係性の危機。この先は違うステージに入るしかないのか!? 愛とか無人島の話ではなくて、予防接種とか妄想について語るような? 妊娠のリアリティは、思わぬ影響をもたらしている。
…とかどうでもいいことを長々と考えるあたり、マタニチーブルーか、アルコール不足のどっちかかしらね。
2013年5月11日土曜日
ふがいないあたしは空を見た
「自然、自然、自然。ここのやってくるたくさんの産婦さんたちが口にする、自然という言葉を聞くたびに、私はたくさんの言葉を空気とともにのみこむ。彼女たちが口にする自然、という言葉の軽さや弱さに、どうしようもない違和感を抱きながら、私はその気持ちを言葉に表すことができない。乱暴に言うなら、自然に産む覚悟をするということは、自然淘汰されてしまう命の存在をも認めることだ」
窪美澄・著『ふがいない僕は空を見た』。妊娠の参考本じゃなくて小説として手にとったのに、これまでの読んだなかで、妊娠・出産に関連する描写として一番しっくりきた。登場人物の一人に、助産師がいる。冒頭はオムニバス形式のなかで彼女の語りの章からの引用で、個人経営の助産院だけに「自然に産みたい」と希望してやってくる女性たちへの思い。
妊娠に関連して、「自然」という言葉で括られる様々な不自然さにうんざりし始めている。「無痛分娩にするかも」と言えば、自然に産むのも良いもんだよ、赤ん坊の顔を見れば痛みも疲れも吹き飛ぶよとか、やっぱりオーガニックでナチュラルな無添加フードですよね、オーダーしちゃってますとか、空気清浄機と安全素材のおもちゃ揃えましたとか。
他人は他人。分娩様式の選択に口を挟まれたときなど、実害があるときだけ否定すれば良いとは分かっているんだけど、ついそれ以上の思いを抱いてしまう。「自然」を愛し、恥ずかしげもなく「自然」を説いてくる人ほど矛盾が多い気がする。子どもが欲しくなったから排卵日計算して仕込んだっていうのは自然? 鉄分と葉酸だけは食材じゃなくてサプリで摂るのもOK? 食べづわりでマックのフライドポテトが止まらないって言ってたけど? 食べたくなるのは自然? でも添加物は不自然?
欧米では主流になっている無痛分娩が日本ではマイノリティなのは、「自然に産む」ことが推奨され、痛みすら美徳と捉える日本の風潮によるものだといわれている。結構なことだ。あたしは痛いのは嫌だし、あまり痛くなかったから愛情が薄れるならばそれまで(じゃあ父親はどうなるんだ)なので、選択肢として無痛・和痛分娩もある病院で出産を考えている。ひねくれてるのも、臆病なのもあたしのネイチャーです。自然体でいさせてね!
2013年5月8日水曜日
春のフレッシュマン・シーズン
春先、スーツを着慣れていない、新入社員と思しき若者達が、大きく張った胸とみなぎるエナジィで満員電車をますます狭めてくれる今日この頃。医療業界も例外ではなく、産婦人科でも見慣れない、いかにも初々しい白衣の人々が増えた(医者なのか看護師なのか助産師なのかは判断がつかない)。
小太りの男性が診察室に駆け込んでいったので遅れてやってきた付き添いの人かと思っていたら、超音波検査のときに白衣で現れたため、多分遅刻したのであろう新人産科医であることが分かった。腹部の超音波だからまだいいけど、風貌も、不慣れな手つきも、白衣の雑な着方もそこはかとなく不安を感じさせる。
しかしこちらはまな板の上の鯛。煮るなり焼くなりされるのを待つことしかできない。腹部を出して待っていると、超音波検査用のジェルを、予告なしにたーーーっぷりとかけられた。おフレンチのソース料理だったか…それは新しい。その上、検査装置をやみくもに動かすので、なにがなんだか分からない。「頭です」「右目です」という説明はあるが、まったくそれらの輪郭がつかめない上に、採寸している箇所もなにやら怪しい。前回は見えていた頭や手足のパーツに何かあったのか、ますます心配になってくる。受け取った超音波写真は、今までの中で一番わけがわからない、部位すら判別できない心霊写真状態だった。
ティッシュ箱を手渡してくれずに、「はい、お腹拭いたら結果を待って下さいね」と言って去る新入りセンセイに、「終わった後の始末をしない」男の姿を見る。拭かないでそっぽを向くタイプですね。ティッシュを手繰り寄せて、お腹を拭き始めて二度びっくり。ショーツにペーパータオルを挟んでいるのに、そこに染みて、さらにサイドに流れでて、脇腹とおろしたジーンズも濡れているほどのジェルの量だった。ヌレヌレがお好きなのね。…って、ふざけんな!! お陰で会社に直行するはずが、着替えのために帰宅を余儀なくされてロスタイム…はた迷惑なOJTである。
看護師が横で見ていることもなく彼とは1:1だったし、このヌルヌルの事後放置プレイについてフィードバックする機会は当然ない。だとしたら、この人は気づく機会はあるのだろうか。何人目かの女が、私のできなかった指摘をビシっとしてくれることを願いつつ(それ以上に、もう彼に当たらないことを祈りつつ)、診察室を後にした。冷やしてはいけないはずの腹はジーンズのジェルに浸ったままで…。
2013年4月28日日曜日
母親学級会
案の定、予約が入っていないという。予約課にも産科にも記録がないと。いやいやいやいや、相手方の名前こそ控えてないが、二人と同じ話をしてようやく予約に漕ぎつけたのだ。通話記録も残っているのでいざとなったら日時まで正確に伝えられるが、そんな面倒を起こしても仕方ない。「予約がとれているものと思って会社休んで来ているんですけど、結局どうすればいいですかね」と困り果てた(実際疲れたし)感じで聞くと、三回分の予約を手配してくれた。ここまでの所要時間、約25分。
そして二時間半と言われていた母親学級はたっぷり三時間。たまげたのが、冒頭の挨拶。「最近は忙しい方も増えて、この母親学級も見直されているんです。今度から一時間半が二回になるので、皆さんは二時間半を三回受けられる最後のクラスなんですよ。しっかり聞いていって下さいね」。勝手に感極まる金八先生、卒業式前日ばりのプレイに沸騰しそうになるのを抑えるのが精一杯だった。「お仕事都合して来て下さい」って言ったくせにアンタ…なんであたしを留年させてくれなかったの!? こっちは午前中在宅勤務、18時から出社、本当に万障繰り合わせて来てんのに…。
心の叫び虚しく、「最後の完全授業」が始まる。自己紹介で「幸せな人でいっぱいのお部屋ですね」ってキラキラ瞳を輝かせる女子に照らされてあたしの陰が増す。周囲の意気込みに、大爆音でドリカムのポジティブソングメドレーを聞かされる気分だ。うれしい楽しい大好き、大好き~♪
四人組での「今、悩んでいること」ディスカッション。腰痛だ食事だ出産準備だはまぁいい。あたしもいいオトナなので、性生活や飲酒レベルの疑問を持ちだして場をかき混ぜたりしない。
「どこのサプリ?」
「アム◯ェイっていう会社のですけど…」
アム◯ェイ! ア◯ウェイって! と心のなかで叫ぶあたしをよそに、他の二人は「聞いたことないー」「妊婦にも良いんですかそれ?」いや、多分良くないから。そもそも企業体としてのア◯ウェイを知らないっていうのは、世間の一般的なレベルなのか?
サプリ女子は嬉々として「皆さん知らないんですかぁ?」と、あたしにEyes to me。いいオトナとしては、大手マ◯チだよね、とか言わずに「知ってます」と受け流した。
終了後にアム◯ェイ女子が布教活動に勤しんだかどうかはあたしの知るところではない。分かっているのは、まだ二時間半(三時間?)のクラス二つ+両親学級(こちらは土曜日にも設定がある。ズルイ)を控えていること…。仕事の十倍くらい消耗するこのお勉強会、卒業する頃には、未来予想図が 思ったとおりに 叶えられてる♪ のかな?
2013年4月19日金曜日
弱者を思い遣るのは弱者
ほんの数十秒のことだ。しょうがないな、くらいの気持ちだったが、立って周りを見渡すと、座っていた列(七人掛けだかの一般席)が、全員、スマホに目を落とすか寝ているかしているリーマンだったのでなんとなく腹が立った。いやあ、こっちもニンシン六カ月なんですけどね…。スリムボディで(NOT!)分からないにしても、「体が不自由な老人に席を譲る」「女性より先に立とう」とか、多少なりとも思わないのかね…。
会社でこの話を持ち出すと、「だから! Mマークつけて下さいよ!」という議論にまたなるのだが、百歩譲ってつけていたところで効果があったか疑問だ。ゲームに夢中なオッサンが気づいて配慮するとは思えない。席を譲った老人が、「しまった妊婦だったか」と思う…ほど認知が高まっているのかは分からないが、それはそれで気の毒なだけだ。
同僚がさらに、「弱者に気づくのも弱者だけですね! どういう社会ですか!」と憤慨してくれる。韓国では、優先席が空いていても一般の人は座らず、空けておく風潮があるらしい。それを聞いたときは、極端だな、と思ったけど、あるいはその方がマシかも。「事情」を抱えてそうにない人が優先席に陣取って携帯に熱中、というのは珍しい光景ではない。もはやあたりまえになってるけど、残念な社会には違いない。
2013年4月12日金曜日
働く母親学級
出産を希望している病院で、母親学級の受講が必須だと言う。全四回、何週目に受けるかが決まっていて、指定日はすべて平日午後、所要二時間半。
今のあたしならなんとかならないでもない。周囲に多少負担を強いることになり、自分の仕事を追い込むことにはなるけど、それでも職種・環境的に融通が利く方だ。でも他の職種のときだった頃だったら仕事にそんな穴の開け方をするなんて考えられなかったし、チームプレイの中で周囲の風当たりもあっただろうと思う。シフト制だったら? 工場のラインにいたら? 周りに迷惑をかけて、自分でも負担を感じながら午後休を無理やり三回ねじ込むほど価値あることを教えてくれるんだろうか。ちなみに、「長時間の外出は疲れるので検診日は別に設定して下さい」という注釈付きだ。はい、それは別途一回休みってことね。ちなみに母親学級とは別に一回設定される「両親学級」は、土曜日の設定もある。父親は平日は辛かろうという配慮をされるのか。
万障繰り合わせて来て本当に良かった! と感動させてくれる内容ならまぁいいけど、テキストをめくると極めてレトロな挿し絵が描かれていて…。
2013年4月7日日曜日
ママたちのイッキ!
そんなしょうもないことを考え出したのは、今朝の日経新聞朝刊の記事に起因する。保育所不足を取り上げた記事のタイトルが「保育所足りない ママたちの一揆」。内容自体は格別新しくもなく、保育所に入れなくて嘆く母親たちについての記事なのだが、この見出しのセンスに既に旧態然とした姿勢を感じるのはあたしだけなのか!?
保育所に入れない、というのは、ごく平均的な家族を例にとれば「夫婦」二人の問題であって、決して「ママ」だけのものではない。さらに、認可保育所を増やすよう行政に働きかけることを、本来お上に対する反乱を意味する「一揆」で括る、というのはあまりにも安易じゃないか? 暴動じゃあるまいし。
まだ保育所探し(いわゆる「保活」ですね)にも未着手なので内容に対してはコメントできないが、もともと待機児童が多いのがよくよく取り沙汰にされる地域で、記事のなかでも挙げられている区に該当するのでそれなりの覚悟が必要なのだろう。落選続きになったら、日々イッキでもするっきゃないね〜。
2013年4月5日金曜日
守りのクリーム・マッサージ
内臓が圧迫されるので最近は食事毎に食べられる量が減った。でもパンダが下に降りるにつれて食欲がぐいぐい増すよ、と先輩妊婦が言う。はて、そうなったらどうしよう。本能のままに飲み食いするのがあたしの健全な食生活の方針なのだが、+10キロでいいって言われたって、医者は何も保証してくれないしな。戻らなかったらお先真っ暗だ。
「五十代とは思えない」という言葉が五十代女性への賛辞であるように、「子どもを産んだとは思えない」体型、という表現が経産婦への賞賛としてまかり通るということは。ウラを返せば、一般人が五十代的五十代であるように、「出産したことが一目瞭然な産後体型」がスタンダードだってことじゃないか。「産前の体型に戻す」を謳い文句にした高額美容サービスが市場にあるってことは、それだけ戻すのが大変だってことなのか。
いつもなんとなく不満があって、もう少し痩せればいいんだけどな、と思っていた自分の標準体型がこうも惜しいなんて。明日の勝負のため、ではなくて、一年後の自分を憂えながら塗るクリームはときめきがないな、とかぼやきつつ、今までにない熱心さで自己マッサージを施しているけど、妖しいテカリが気持ち悪い。
2013年3月26日火曜日
明けないつわりはない
…ってな具合にね、終わるもんなのかと思ってたんだけど、つわりってやつが。そもそも「うっ」って口を抑えてバタバタとトイレに駆け込むとか、食べづわりとか吐きづわりとか土が食べたくなるとか、典型的な症例がなかった分、終わりもそんな明快にはいかないようで。唯一の、妊娠によってもたらされたであろう症状が消えたので、峠は越したのだと思うことにした。
酒に異常に弱くなったと悩んで妊娠に気づかないでいるうちにピークを過ぎてしまったらしいあたしのつわりだが、妊娠を認識してからの特殊な症状としては、朝の鼻血と、それに伴う異常な起きにくさ(頭が覚醒しているのに体がついてこない)、それから満員電車の体臭で引き起こされる吐き気というのがあった。体臭なんて好きな人はいないし、季節替わりはいつも嫌な思いをしていた気もするんだけど、嗅いだ瞬間リバースしそうなあの衝動(駅のトイレで一回リバースして以降は通勤時間をずらした)は、特別な域に入ると思う。
鼻血はやっぱり異常だし気持ち悪いし、つわりの一種だろうと思っていてもなんだか不安なので、「霧が晴れて夢のようにポジティブになる」と言う人がいるつわり明けを楽しみにしていたんだけど、鼻血が一日置きに、あ、二日出てない、とか思ってるうちに、いつの間にか過ぎ去っていたようだ。別れを告げることもなく。
実は体調の平常化と同じくらい、「霧が晴れたような前向きさ」が湧き出すのを楽しみにしていたのだけど、何も兆候がない。妊娠していることが嬉しくて世界中に告げたくて、とか、生へのリスペクトがあふれてウキウキワクワク、とか書いてあるんだけどね、物の本には。どこよそれ。
でも考えてみれば、基本が後ろ向きでネクラで妊娠にも消極的なあたしが、ニュートラルな気分になっていること自体、+要素が働いているのかもしれない。マイナススタートだから0になったってだけで。ヤダヤダヤダもう妊婦やめたい、黒ずんでいく体なんていらない、浴びるほど飲みたい、つーか飲み友だちもみんな妊娠すればいい、…とか思わなくなったし。つわりが明けたというよりは、つかえがとれた、諦めがついた。
これからものすごい晴天がくるのかも、という淡い期待もないではないが、梅雨が明けただけでも良しとしよう。鼻血ストップ、バンザイ。
2013年3月16日土曜日
Watching: Nine Months 〜九ヶ月の不公平感
ところで映画タイトルの「九ヶ月」は、日本の「十月十日」とは違って欧米では一般的に九ヶ月で妊娠経過を数えているからなんだけど。同僚の外国人に「今、何ヶ月?」と聞かれると −1しなければいけないので紛らわしい。ちなみに同僚の一人は「アメリカでは九ヶ月なんだよ」と日本人の奥さんに言ったところ、「アメリカ人は妊娠期間が短いんだね」と驚いたそうだ。そんなわけないだろ!
でも考えてみると、九ヶ月にしろ十月十日にしろ、概ねそのくらい腹のなかで育てなきゃいけない、というのは万国共通なわけで。それって結構すごく公平なことのような気がしてきた。芸能人が売れ時で多忙だから三日で、というわけにはいかないのだ(代理母出産はまぁ置いといて)。あの人もこの人も、ほぼ同じ胎内期間を経て世の中に産まれてきたわけで。人類皆平等。そう思えばこの期間もまた乗り越えられなくもな…いけど…せめて「六カ月で生後四ヶ月相当の赤ん坊を出産」とか、合算で選択制とかならいいのに…six more months...
2013年2月26日火曜日
オンナを辞めるわけではないが
ジムは、妊婦向けアクティビティが充実しているところもあるのだろうが、通ってるところは地元の小規模ジムなのでそんなものはない。あっても行かないだろうけど。おめでたがられるのも噂されるのもめんどくさいので退会理由は「病気」に◯をした。つっこみにくいのでつっこまれない。熱心だったわけじゃないけど、週二回くらいは来ていたので、なんとなく名残惜しくはある。目指した数値も達成できないまま…あたしはいつここに戻って来れるんだろうか。
エステというか、筋トレやらマッサージやら、要はボディメンテナンスを選べるチケット制の施設。思えば、妊娠二ヶ月でも、気づきもせずに腹筋に精を出して、腸セラピーで全力で揉みだしてもらってたよ。一向に痩せなかったのは妊娠のせい…かしらん。こういうところは解約を申し出ると説得とDM攻撃に転じそうなので、きっぱりと妊娠を理由に退会した。再開するのは、ジムよりハードル高いだろうな。
そして脱毛。Iライン、Oライン、痛み堪えて通ってたのに。だいぶ恥ずかしかったけど、今となっては愛おしい、傷が付く前のあたしの会陰。生涯現役宣言で続けてきたけど、中途解約ってのは、やっぱり現役引退ってことかしら。しかも妊娠すると一時的に体毛が濃くなるらしい。物の本には、腹にも毛が生えると書いてある。そんなんで保護にならないだろうに…ムダに増えるムダ毛。改めて見てみると、値崩れする前に十万円以上かけたワキにうっすらと産毛が見え隠れしてきた。どうしてくれるんだ!? オンナであるあまりにオンナから離れていくことの不条理…。
2013年2月18日月曜日
寝ても醒めても会陰のこと
切った後にきつめに縫ってもらえばちょうどいいよ、と親友は言う。もう全然復活しなくてセッ◯スライフは最悪になるらしいですよ、とまたある友人が脅す。どちらも出産経験はない。人の気も知らないで!
絶対買わないだろうと思ってた『たまごクラブ』をとうとう買ってしまった、「会陰切開切らないで済むコツ」がどうしても読みたくて。アサ芸を買うより数倍恥ずかしくて勇気を出して買うまで書棚の前を行ったり来たり。そうまでして買った甲斐あって、カレンデュラオイル(なんじゃそれ)やアーモンドオイルでマッサージをして拡げておくと、切らずに済む可能性がある、という新事実が分かった。へー。
でも、拡げるって、どうよ。二十数年、締めることに注力してきた筋肉を、自らの手(とナチュラルオイルの力)で逆に拡げるって。切れ目はないけどユルむ、というのは別の悩み。しかも、うまく拡がらなければ、自然に切れてしまって縫い合わせにくい、という最悪の事態にもなりうる。拡げるべきか否か、それはそれは難題。とりあえず、「生活の木」にオイルを仕入れに行きますか…。
2013年2月15日金曜日
妊婦の記録写真
でも私が最近、撮っておきたくて仕方がないのは、横から見た腹のショットではない。黒ずんでいくという噂がある、乳首だ。ビーチク。まだ変わってない気がするけど、見慣れているだけかもしれないし。髪の毛のダークブラウンのカラーリングが徐々に落ちていくように、ある日ふと気づくと「だいぶ黒くなってる〜!」という事態に陥るかもしれない。なのに美容室の予約では解決できないのだ。あな恐ろしや。
変化を記録するためにスマートフォンで毎日撮ろうかとも思えど、写真を人前でブラウジングして探したり、自分の手元とはいえ自動アップロードされたりすることを考えると迂闊なことはできない。日々目に焼きつけて黒ずみを見逃さないようにしよう、と、今日も、じっと、乳を、見る。
2013年2月7日木曜日
オトナの事情
驚いたことに、彼はどこで配布されているかを初めて知ったのではなく、Mマークそのものの存在を今さら知ったのだ。これまで視界に入ったことがないらしい。ひとでなし。なんつって。見えても特に意識してこなかった私の方がひとでなしかもしれない。いや、無視していたわけではないが、座ってたら立ち上がるなり、立ってたら離れるなりを黙ってするだけで、大袈裟に譲る姿勢はアピールしてこなかった。気恥ずかしくないか?
Mマークをつけている人は何を求めているのだろう。席を譲られることを? 近くで煙草を吸うのを躊躇されることを(喫煙席にも関わらず)? 優しい眼差しと好意を? しかしそんなものはほとんど期待できない、とは、妊婦を卒業した友だちの弁。席を譲られたことなんか数えるほどしかないよ、と。じゃあますますなんで? 大体、車内は携帯に目を落としている人ばかりでMマークにも気づかんだろうよ。
そもそものMマークの主張やその効果について懐疑的で、それに妊婦ということであえて目をつけるワルモノも世の中にはいるように思えて。でも私がMマークを着用しようとは思わない最大の理由は、誰にでも事情がある、というのが世の真理だと思うからだ。そしてそのほとんどは表立っては見えない。
ペースメーカーをつけている、人工透析を受けている、耳が聞こえない、来週大手術を控えたばかりだ、原因不明の偏頭痛が続いている、魚の目が死ぬほど痛い、祖母が危篤なのに仕事に行かざるをえない、世紀の大失恋で死にたい気持ちを抱えている…。あるいはそこまでではなくても、膝から崩れ落ちそうで、立っていられそうになかったり、誰かれ構わず労ってほしかったりしても、それをアピールするためのマークはない。誰にでも事情がある。そんな事情を胸の、体の内に抱えて生活を続けるのがオトナなのだ。
つうわけで、オトナの女を標榜したい私はMマークを放置しているわけだけど、捨ててないあたり、「いやー、やっぱ気休めにはなるわ〜」なんてそのうち付けてたりして。妥協するべきときは容易く妥協する、それもあるいはオトナの事情なのだ。ちゃんちゃん。
2013年2月6日水曜日
予定日は成瀬巳喜男
さっそく書店で手に取ると、「『おめでたですよ』と医者に言われて、『めでたいですかねえ』と訊き返してしまった」と帯にある。これは確かに、そこここにある懐妊礼賛の物語とはひと味違う、と思ってさっそく読み進めた。読んだ。だが。
十月十日とやらを経ていくにつれての主人公の微妙な気持ちの変化、どこかからプラス思考が湧いてくるその感じに、十二週目で取り残されている私は全然シンクロできなかった。な、な、な、なんで今、急に肯定的な気持ちになったの? トリガーは? と戸惑うばかり。小説に指南書の役割を求めてはいけない。
気を取り直して、じゃあ私の予定日が誕生日の有名人は、と調べてみたのが本投稿のタイトル。立派立派。でもほかの有名どころは、際立つところで梅宮アンナ、アグネス・チャンなど。
結論1。予定日がずれても、あまり惜しい気がしない。結論2。この本の良さが分かるのは、その予定日とやらが無事過ぎて、何ヶ月か、もしかしたら何年か経ったあとなのかもしれない。
2013年1月26日土曜日
おしゃべりなオトコは嫌いだってば
妊娠云々よりも腰痛のほうが急務なのに、整形外科では湿布薬を処方されただけ、安定期前ということで整体やマッサージ、鍼灸も受け入れてくれない。駅前で見かけたところを片端からあたって同意書を書くことを条件に施術してくれたカイロプラクティックがあった。
予約を受け付けないので、待合室でマンガを読みながら延々と待たされるその院は、一度呼ばれてマッサージを受けてから、またしばらく待った上で整体師の施術を受けるというシステムだ。藁にもすがる思いで行った一回目で少し痛みが軽減されたので、「出産まで毎週通うのが理想」という向こうの指示に応えるのは難しいだろうと思ったけど、とりあえず二度目も行ってみた。
前週とは違うマッサージ師にあたる。カルテの妊娠週数の記述を見たのであろう彼は、「おめでとうございます」と言ったあとに、「ボクも二歳児がいるんです」と話しかけてくる。マッサージ中に格別話したくないし、ましてや彼の息子のことなんてどうでもいいんだけど、一応「あ、そうなんですか〜」と、素っ気なく聞こえない程度に語尾を伸ばして答えてみる。が、それをすぐさま後悔することになる。
「もう産む病院とか決めてます?」に始まる彼の話は、「妻はすごく計画を練ってたんですけど、ギリギリで帝王切開になっちゃって」「立ち会えなかったし、痛そうだし、それは残念でしたよ」「子どもはかわいいんですけどね、ずっと一緒に居ると頭がおかしくなりそうで。こんなこと言っちゃアレですけど、ここ、出勤する場所があって良かったなって思いますよ。逃げられて。女性は大変ですよね、ほんと」
マッサージは下手なのに口は達者で、こっちがああ、とかうう、とかしか発語していないのに、話が止まらない。こんな立ち入った内容を客との世間話に使われて、この人のヨメも大変だろうな、といらん心配をしてしまった。妊婦ケアを謳い文句の一つにしてるのに、毎度こんな話をしてるんだろうか? そのあと30分以上待たされてからようやく対面できた整体師は寡黙で、施術も的確だった。
軽率で配慮が足らなくて技術力もないマッサージ師にはうんざりしても、整体のためならリピートしていたかもしれない。でもあたしは気づいてしまった。軽率なマッサージ師よりも、彼に猛烈な嫌悪感を抱き、心で悪態をついてしまう、自分の中のブラックはもっと嫌なのだ。これは妊娠の作用なのか? つわりの一種? 体は多少ほぐれても、気持ちが凝り固まっていくようじゃどうしようもないのでこの院とはさようなら。腰痛とはまだまだ付き合うことになりそうです。
2013年1月25日金曜日
まだ間に合う、と友は言う
「産むの!?」と重ねて主役の彼女が聞く。産むの、って。選択肢は別にないでしょう、と答えると、「あるよ。堕ろすならまだ間に合うよ」と。新しい反応だな、とたじろぎつつ、選択肢としてないことを告げると、なにやら納得がいかない様子で「アンタが妊娠ねぇ」とつぶやく。
ひと仕切り婚約に至った流れと今後の予定についての話で盛り上がった後に、話がまた戻ってきて、「で、どうなの妊婦」と話をふられる。昨日知りたての「会陰切開」について語ると、案の定誰も知らなかったので、wikipedia で調べてエグい図解を共有する。切って縫えば治るって、誰に見せるもんじゃなし、と慰められるのだが、切るも恐怖、縫うも地獄、でも何が嫌って、市場価値が下がること?
主役が「決めた、あたし、結婚して何年か経って退屈しても、子どもは産まずにネコ飼うわ」と、婚約したばかりのくせに宣言する。「アンタも間に合うって」。ろくなこと言わないな、と普段なら軽く流せるところなんだけど、ホルモンバランスのせいか、一人だけ酔ってないせいか、いつもよりイラッとする気持ちを抑えられない。
「でもさ、普通、結婚した時点でもう市場になんか出るつもりもなくて、子どもができたら幸せいっぱいで産むのに必死だから傷なんて気にしないんだろうけどね。降りたくない気持ちのまま妊婦だから辛いよね。」指摘はごもっともな部分もあり。
現役ぶって何がしたいわけじゃないし、市場価値、っていったって、酔った勢いであわよくば的に誘われること? そんなものは価値とは呼べまい。でも、私の会陰…昨日まで名称すら知らなかったそんな部位がこんなにも愛しいなんて。
断ち切れない現役感と会陰への執着はありつつも、消極的なようでいて自分は少なくとも「堕ろす選択肢は考えなかった」ことを認識したのでよしとしよう。友はろくでもないことを言うが、想定外だからこそ友情が続いているのだ。
2013年1月22日火曜日
酒と泪と男と妊婦
…ビールの缶に書かれたこの字ヅラをよくよく読み込む日がくるとは思っ
2013年1月17日木曜日
パンダ日和
胎児をいわゆるベビーとして意識してしまうと、ダメだったときにショックが大きい。友だちを慰めてきてつくづくそう思った。だから軽い認識でいるのがいい。とはいえ何かと言及することは避けられないので、夫のヒトとの間では「パンダ」と呼ぶことに決めた。
なぜなら、パンダは人気者だから。ではなくて、パンダの繁殖は難しい、という自戒を込めて。ってほどでもないけど。ノリだけど。昔パンダのランランだったかが寝返りを打って自分の子どもを潰してしまったのは子ども心に衝撃を受けたし、去年もシンシンの子どもがわずか数日で死んでしまってニュースになった。パンダに過剰な期待をしてはいけない。
あと、子どものときに好きだった『ジャングル大帝レオ』。主題歌で「パンジャの子」という歌詞をずっと「パンダの子」だと信じて歌っていたのに、親は正してくれなかった。なんでパンダからライオンの子が産まれるんだろう、とは思ったけど、疑問をさして掘り下げないのは昔からの性質らしく。鳶が鷹。あるいは蛙の子は蛙。どう出るかは分からないけど、パンダとの日々は、知らぬ間に始まっている。
2013年1月15日火曜日
パンダ発見
出張から帰国した翌日、大雪が降った。その夜からいきなり、立ち上がるときに背中に猛烈な痛みが走るようになったので、次の日は会社を休んで病院に行くことにした。前日の雪がまだまっさらで、歩行路が僅かしかない病院までの道のり。
腰のX線をとる前に、妊娠の可能性が0ではないならば一応妊娠反応をみてみませんか、と聞かれ、「生理は不順なんです。いつも不順なんですけど」と固辞しながら尿検査を提出して戻ると、「陽性ですよ」と微笑みかけられた。ヨウセイ? 妖精?
全く予期していなかったので、あれよという間に婦人科で台に載せられて大開脚で「ほら、います。計算だと9週目くらいですかね。どうですか」と感想を尋ねられても「ただびっくりしています」と、気が利かない、広報的にいえば「使われない」タイプのコメントしかできなかった。
うれしくないわけではない、と思う。でも手放しでうれしいわけでもない。そういえば体調が悪かったのも、酒に弱くなっていたのも、11時間の飛行がいつもより体に響いたのも、だからだったんだ、としっくりくる感慨の方が強い。忘年会シーズンくらいから思うようにお酒が進まなくなっていて、先週もたった三杯の泡で吐いた。まわりには歳のせいだよ、とあしらわれて、腑に落ちないまま飲み会の席で水をがぶ飲みしていた。
そんなことを思い返していたら、ふと浮かんだのが、「今年の忘年会は、オールとかできないんだ、あたし」という思いだった。恒例の忘年会! ちょっとマンネリ化しているけど、でもそんなところが心地良い、例年のお約束。オールどころか行けないのかも、今年どころか、来年も再来年も行けないのかも? 決定的になにかが損なわれてしまった感じ、もやもやとそのオーラが胸に広がって、広がりきったらまた薄れていった。心配するべきことは、もっとほかにある。
その心配を増やすことが任務かのように、 看護婦さんが笑顔で、かつ淡々と、諸手続きや今後の流れを説明しながら、大量の書類と冊子を渡してくれる。質問はない? と言うので「安定期に入るまで仕事先には言わないでおこうと思いますが、安定期はいつですか」と聞くと、20週くらいね、と答えながら「すぐ言うのがいいわよ。残業とか、仕事の融通してもらったりね」とまた笑う。いや、一昨日までアメリカ出張してたんですけど、それでいきなりなんて、と戸惑うと、「知ってたら怖くて飛行機なんて載れなかったわね!」とケラケラと弾ける。そうなのか? 知ってたら行かなかったのか? ってか、普通って、なに基準よ? 手元の、もらったばかりの昭和的なイラストが表紙に描かれた冊子に、求めている情報はありそうにない。
「こんにちは赤ちゃん♪」的な出版物やブログは数多あれど、しっくりくるものが思い浮かばない…のは多分、まったく探したことがないからだろうけど。そんなに夢見る少女じゃいられないところの気持ちをつらつら綴れば、少しはもやもやが和らぐんじゃないかと思い立ってブログを立ち上げてみた。仮に「すべての犠牲が犠牲とも思えなくなる」(って一般的に表現されがちな)瞬間とやらがくることがあっても、酒に弱くなって衝撃をうけたこととか、年明け早々から忘年会に考えを巡らせたこととか、ロマンスの神様、いつまでもずっとこの気持ちを忘れたくない♪ という万感の思いを込めて…。